foodbiz.asia

post by Fumi Michihata
report

SKSJ2023、今年のテーマは、UNLOCK

2023年7月31日 11:17 - Miki Michihata
熱い夏、といえば、"SKSJ-Global Foodtech Summit-" 、6回目となるSKSJ 2023のテーマは、UNLOCK(アンロック)。業種・業界、国の枠を超え、また既成概念を解放して、より新しい産業を切り開こうという指針が示され、約40のセッション、登壇者は、100名近く、その3割が、北米、アジア、そして、欧州、南米の海外からのイノベーターたちが集い、まさに世界のフードテック&サイエンス、最前線ともいえるディスカッションが繰り広げられました。

(新しい領域へ進化する日本の食品メーカー)
今回は、昨年のプレゼンテーションが、すでに実装された事例、実際に商品となっているものも多く、特に、日本を代表する食品メーカーの技術と行動力が際立っていました。実に、参加者の4割強がメーカーからと、特に、味の素、サントリー、日本ハムなど、グローバル市場にも進出する企業のスピード感にノックダウンされました。

昨年、空気からタンパク質をつくると、プレゼンした味の素の藤江太郎社長。フィンランドのベンチャーSOLEIN 社と組み、同社の得意技、微生物による発酵技術でさっさと製品化。この3月には、シンガポールで認可を得て上梓、レストランで試験的に導入されているそうです。そのタンパクは、人間だけでなく、乳牛の飼料としても供され、MEIJI、そして酪農家と組んで新たなエコシステムを構築することを計画中だそうです。他にもイスラエルの培養肉ベンチャーと組んだり、アミノ酸そして発酵を軸に、どんどん領域を広げています。
加えて、女性向けのアミノ酸のタブレットの開発・販売、さらに、社内ベンチャーとして、女性の健康を核に、新たな消費者ネットワークづくりを立ち上げなど、顧客に向いた方向にも、アグレッシブに動いています。
ajinomoto_purpose_SKS2023.jpg
<<アミノサイエンスにより、地球規模でウェルネスを目指すという、味の素社のパーパスを説明する藤江社長>>


サントリーは、昨年登場された青木幹夫未来事業開発部長が登壇され、イギリスのRem3dy社とともに、3Dプリンターによる、パーソナライズされたサプリメント、NOURISH3Dをスタートしています。青木氏は、昨年、3Dプリンターを使うことで、物流の負担を減らすと言われていましたが、まさに素材と3Dプリンターのようなアセンブルするものがあれば、欲しい場所で欲しい時に、求められるものが手に入ります。


Nourish3d_SKS2023.jpg
<<3DプリンターによるパーソナライズドサプリのRem3Dayの創業者Mellisaさん、かっこよくてかわいい!>>
写真提供:SKSJ2023 / シグマクシス


両社とも、昨年のSFチックな話が現実になって、実際に購入できるようになっている、そのスピード感に、日本企業・日本市場への危機感も感じられます。残念ながら、主要となる市場は日本でではないなあ~と、悲しいですが、日本拠点に、どんどんグローバルに出ていかないと、今後はないですね~。

(人文知領域も、テックをどう使うのか)
AIやロボティクスによる技術により、企業が抱える課題は解決されていくでしょう。たとえば、ロボット導入により、食品工場や外食の厨房など、より正確で安全な作業が実現でき、効率もあがり、一手不足の解消ともなります。ビッグデータ、AIにより、需要予測や自動発注ができ、食品廃棄の削減も実現することでしょう。しかしながら、末端にいる我々にとって、そういったテクノロジーをどう活用するのかは、それそれで、個人の問題でもあるけれど、社会の問題でもあります。ChatGPTも話題になっていますが、結局は、今までのデータを集めてうまくまとめただけ、大学生のレポートの代筆は得意そうだけど、じゃああ、あんた何するの?といったら、答えがでなさそう。人間の知は、どう活性化され、つながり、活用されていくのか。少なくともAIには使われたくないですよね。

先述の味の素の社内ベンチャー、LaboMeブースで広報活動をされている女性と話をしましたが、テックやAIと聞くと、ちょっと引いてしまう、と。パーソナライゼーションというよりも、自分の求めているものくらい自分で探すし決めるわ、と互いに大きく同意。
やはりテックは、どちらかというと男子好み。2018年シアトルのSKSに参加した際も、女性同士の会話となると、大きく扱いに面倒な道具は、要らないというと盛り上がっていました。女性は合理的ですからね。
人間の技術・知識の蓄積や伝承がどこへいっちゃうんだと。人間とは??が問われているのだと思います。パーソナライゼーション、結局、マーケティングの手法のひとつ。欲しいだろう、欲しいだろうと、、購入を促されるんですね。ちょっとネガティブですが、ポスト資本主義への考察や哲学本(*)が最近話題となり、人間が生きるってなんだろうと、、哲学的なところに行き着きます。

(小売のデジタルトランスフォーメーション)
SKSJ、食品メーカーの参画が実を結んでいる一方で、小売業、レストランや惣菜業の分野からの参加がほぼゼロ。そんななかで、2019年から毎回壇上に立たれているのが、USMH、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングの藤田社長。昨年は、自社デジタルシステムと、植物工場、BEYOND MEATとの独占販売契約締結の話題でびっくり!でしたが、今年も、さらに驚嘆!!!の発表が続きました。銀行業務、そして化粧品のオルビスとの共創で、冷凍食品の開発・販売など、次から次とネタがつきません。こちらは、リテールガイドにて、記します。
inner_color_deli.jpg
<<"美"の企業と組んだ、USMHのレディミール!秋には発売となるようです。楽しみ!>>


毎回盛り上がり、確実にたくさんの実を結んでいるSKSJ、今回は、銀行や不動産(都市開発)など、異分野の企業も出てこられ、社会、生活というところで形となり、企業間だけでなく、企業と生活者とのつながりがどんどん広がっていっていることを感じました。食から広がる未来、また、来年が楽しみです。SKSJ2023、もっと続きを、、という方には、色々なイベントが用意されているようですよ。

(*) 広井 良典「ポスト資本主義」(2015 岩波新書)「科学と資本主義の未来」(2023 東京経済新聞社)
    國分 功一郎「暇と退屈の倫理学」増補版(2022 新潮文庫)
この記事の執筆者:
Foodbiz-net.com
道畑富美
SKSJ2023、今年のテーマは、UNLOCK
  • 気に入ったらいいねしよう!
    FoodBiz.asiaは、広い視点でアジアの外食ビジネス情報をお届けします。