中国経済はバブルと言われますが、人々の消費も確実に伸びています。小売市場は、伸びが鈍化しているとはいえ、毎年10%程度の拡大を続けており、人々のニーズも量か質へ、モノからサービス・体験型へとシフトしています。また、購入の場もリアルからオンラインへ、凄まじいスピードで変わっています。
昨年は「新小売元年」といわれ、アリババ、京東(テンセント資本)のオンライン通販の両巨頭が、自身で運営、買収や提携により、あの手この手でリアル小売業に参入し、消費者、売り場、そして、そのサプライチェーンまでをも、データで繋いでいくというスゴ技を競っています。
北京で、アリババの展開する 盒马(Hema)鮮生、京東の展開する小象生鮮と新業態である7FRESHへに行ってきました。盒马はカバという読み、で、カバ対ゾウの戦いは、火花ばちばちという様相です。盒马鮮生は上海に20店、北京に13店、中国全土に69店を展開しており、それを追う、小象生鮮は、北京に2店舗を展開、小象生鮮をさらにグルメ化した7 freshは、今年1月に北京の南東部にある経済開発区に開店し、現在は2店となっています。
<<ガイドをお願いした大学院の学生さんに顔認証をお願いしました>>
いずれも、IT技術を駆使した売り場づくりをしており、商品には、QRコードがついていて、スキャンすれば商品情報が読み込めます。もちろん消費者への情報提供という意味だけでなく、セルフレジでのスムースな決済、あるいは迅速なデリバリーという恩恵を顧客に提供してくれます。また、バックヤードでは、在庫管理、そして、蓄積したデータは、正確な需要予測に基づく自動発注と、売り場の裏側にあるサプライチェーンを正確かつスピードアップ、そしてコストダウンすることに大きく貢献します。
レジのないこと、スマホ、顔認証でスマートな決済など、IT系の記事に、多くのことが書かれていますので、ここでは言及しません。北京で、We Chat口座なくて右往左往しましたが、これらのことは、条件が揃えば、日本でも実現可能なことでしょう。ここでは、食品小売業的な視野から、これらの業態で実現しているなぁと感じたことは、以下の5つです。
(1)生鮮品の鮮度や品質を徹底的に追求
(2)売りたいもの」より「売れるもの」の品揃え
(3)デリバリーも含め、レジに並ぶなど、顧客のストレスの徹底的な排除
(4)食の楽しさを追求
(5)テクノロジーとはいえ、ヒューマンタッチな接客を強化している
盒马鮮生と小象生鮮で購入したミールキット を試してみましたが、その鮮度の良さに驚きました(次の記事で書きます)。生鮮品の鮮度、品質、価格は、スーパーマーケットにとって、もっとも顧客ロイヤリティを高めるカテゴリーです。両店とも、試食をバンバンやってますし、そこに、多くの説明できる女性店員をつけています。ヒューマンタッチというのは、まさにこの辺りで、顧客とのコミュニケーションをとる工夫もされているなぁと感心しました。
データ管理で、売れるものを売る、また徹底した無駄の排除も感じられます。両店とも水産物に力を入れており、水族館のような水槽がありますが、盒马鮮生のなかには、肉の売り場(チルド)が、たったの6尺ショーケース一つだけという、水産物に力入れていることが明らかな店もありました。(冷凍ケースも他にありますが)
<<買った水産物でこんなご馳走 7freshで>>
何より、中国で、こんなにも楽しい食品売り場が繰り広げられていることがショーゲキでした。グローサラントやフードホールなど、わいわい言われていますが、ここに実現されているではないかと感じました。
中国は、働く人の層も様々で、安い人件費を活用して、これらのことが実現されているということもあります。という意味では、仕組みに、人の資質がまだついて行ってないなぁと思うこともありました。例えば、、頼んだ料理が時間がかかっているとか、これは一つ課題に思いましたが、どこの店でも、スタッフを集めてミーティングが盛んに行われている機会にも出くわしました。今後が楽しみです。
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