foodbiz.asia

post by Fumi Michihata
report

環境を配慮し、洗びんのプロフェッショナル 京都伏見

2024年4月 8日 14:14 - Miki Michihata
最近は、ガラスびん、特に、一升びんの不足が話題になっています。国内に数か所しかない大きなガラス瓶工場の一つが閉鎖されたことが背景にあるようですが、新びんだけでなく、リユースされる割合も減っているようです。一升びんは、古くからリユースのしくみが確立されていますが、使用済みのびんの回収が進まないこと、また、デザイン性が追求される中、多様化するパッケージ(ラベル)には、その特性上リユースがしづらいものが増えていることも、リユースを阻害する要因となっているようです。
 
私が子供の頃は、飲料はガラス瓶、商品の選択肢もほぼありません。どこの家庭も、ジュースの「プラッシー」やビールは、ケース単位で、酒屋や米屋から購入し配達してもらうものでした。当然、ガラス瓶はケース含め、リターナブルなものでした。が、紙パックやペットボトル化が進み、購入する場所も、小売店からスーパーやコンビニへとなり、いつしか飲料容器は、自治体で回収するものへ、その後リサイクルされるものの、使い捨てのものとなりました。

(入念なチェック、洗びんのプロフェッショナル)
使い捨て、便利な容器に取って代わって、旧来から確立されたリユースの仕組みが縮小していくのは、なんとももったいないことです。先月、フーデックスの展示で、「洗びん」を専門とする洗びん屋さんが、京都南部、酒蔵の集まる伏見にあると知り、伺ってきました。お邪魔したのは、株式会社吉川商店。京都南インターから少し南へ、国道1号線沿いに、山のように積まれたP箱(一升瓶の通い箱)が目印の洗びん工場です。

yoshikawa_shoten_.JPG
<<近県や東京、また北海道からも集荷された一升瓶>>

こちらでは、近隣県、そして東京(東京は消費地、酒造メーカーは数少ない)などから集められた一升瓶を、1日3万本を洗浄しています。その工程は、まず、入ってきた瓶に、割れなどがないかの選別やキャップの除去をします。その後、洗浄機にかけるまで、傷や割れがないかの目視チェック、さらに30分間洗浄機を通ったあとは、目視でチェック、その後も、画像認識を経て、最後に再度目視チェックと、何度も入念なチェックが入る品質管理の厳しさに感心します。
一方、一升瓶の入っているP箱も、送り状などのラベル剥がしに始まり、洗浄されます。そして、工程の仕上げには、きれいになった一升瓶とP箱がセットされ、出荷を待ちます。

yoshikawa_shoten_senbin_1.JPG
<<ここまで来るまで何度かチェックありますが、洗瓶の機械に入る前にも目視でチェック>>

yoshikawa_shoten_senbin_2.JPG
<<カメラで画像認識チェック受けてからも、最後の最後まで、人の目でチェックします>>

shoten_picapica_bin.JPG
<<ピカピカになったP箱と一升瓶>>

(環境に配慮する洗びんの工程)
一升びんの他にも、生協が独自で回収リユースするRびんの洗浄と、京都市内にある、ゼロ・ウェイストを目指す食料品店「斗々屋」の量り売りを利用する際に、貸し出すガラス瓶の洗浄もされており、日本酒のみならず、調味料や食品用のガラスびんリユースの促進に貢献されています。詳しくは、こちらの「びん再使用ネットワーク」のページに掲載されています。
加えて、洗びん工程において、環境負荷を軽減する工夫がされています。太陽光パネルによる発電を一部利用しており、今後は太陽光パネルを増設して、できるだけ化石燃料に頼らない運営を目指しているとのこと。事務所の暖房は、木材チップによるストーブも置かれるなど、工程以外にも環境への配慮が伺えます。
さらに、周辺水環境についても配慮され、地下水を利用しており、排水の際には、pHやBOD値を基準内の値にしてから排出するように、工場内で処理しています。

最後になりましたが、お話を伺い、工場をご案内してくださったのは、株式会社吉川商店の代表取締役、吉川康彦氏と、取締役総括部長の吉川貴大氏のおふたり。吉川代表取締役は、業務上のご経験はもちろんですが、欧州はじめ世界各国、あちこち勉強に行かれており、環境問題について、現場をよく見られておられます。私も色々教えていただきました。「ガラスびんは、家庭でも洗えるもの」と、お話されますが、洗びんの奥深―い深さに、興味は深まるばかりです。一方の吉川部長は、新たな試みとして、リユースカップの貸出など新事業にも力を入れておられ、こちらは外資系企業からも引き合いが多いようです。若い世代ではの新しい展開が楽しみです。
yoshikawa_shoten_reusue_cup.png
<<プラ製のリユースカップ、同素材でふたもついています。>>


すでに今年の夏も猛暑となる予感しかないですが、ひとりひとりが環境負荷を抑えていくことが大事ですね。昨年秋、「福島東和の幡まつり」にたまたま出くわしました。列の皆さん、一升瓶を携えて練り歩かれます。儀礼には、一升瓶でないと、やはり様になりませんよね。日本酒一升瓶の文化は、大事にしたいところです。
fukushima_towa_matsuri_ishobin.jpg
<<白い袋、緑の袋に、それぞれ一升瓶が2本ずつはいっています。一本ぶら下げている方もおられます。>>


参考:びんリユース推進協議会
    ガラス瓶3R推進協議会

この記事の執筆者:
Foodbiz-net.com
道畑富美
環境を配慮し、洗びんのプロフェッショナル 京都伏見
  • 気に入ったらいいねしよう!
    FoodBiz.asiaは、広い視点でアジアの外食ビジネス情報をお届けします。