グローサリーとレストランの造語、グローサラントについて、昨日の日経新聞夕刊に出ていました。市場が縮小していくスーパーマーケットの活性化策として、期待されているグローサラントですが、発祥の地である米国、そして、日本からも多くのスーパーマーケット関係者が視察に訪れるグローサラントのお手本、Wegmansも、その様相が、ちょっと違ってきたかなあという印象でした。
(魅力的な空間がなければ、グローサラントたりえない)
今回、ボストン郊外のWegmans 2店に行きましたが、1店舗は閉店間際で、客はほぼおらず。。今年4月にオープンした新店舗では、ハンバーガーカフェとメキシカンレストランを併設しており、従来の店舗にあるようなイートインスペースはありませんでした。メキシカンレストランの方は、人員不足のためお昼は閉店。夜だけ開業しているとのことでした。今まで見てきたWegmansのイートインスペースは、どちらかというと年齢の高い層が利用する空間というイメージが私のなかでは強く、さらに若い世代(団塊世代以下)が求める空間とは、ちょっとずれているのはないかと感じていました。
<<レジ横にあるバーガーカフェでは、注文をうけてハンバーガーを調理し、テーブルサービスしてくれます>>
確かに、惣菜(prepared meal)市場は伸びており、スーパーマーケット各社の力の入れどころは、惣菜であるという調査もあります(Progress Grocers2018年4月号)。しかしながら、買った惣菜をどこで食べるかというと、スーパーのイートインスペースではないようです。というよりも、今あるスーパーに併設されたイートインスペースには、グローサラントたる魅力がないのだと思います。
(スペースを設けただけでは、グローサラントにならない)
日経記事にあったNPDジャパンのデータを見ますと、スーパーとコンビニ内のイートイン市場規模は1960億円で2014年に比べ25%増加したそうです。この記事によれば、
スーパーでも、コンビニでも、イートインスペースを設ける店舗が増えており、従来にない顧客を引き寄せることができるなどとあります。
確かに、惣菜や飲み物、おやつを買って食べるスペースはありますが、レストランのような使われ方は決してされていません。オフィスランチや買い物ついでの子どものおやつなど、多くは一人でそそくさ食べて帰るパターンが多いのかなあと見ています。
米国でも同じ、Whole Foods Marketは、多くの店にイートインスペースが設けられていて、多くの顧客が利用しています。が、ほとんどは一人客か二人客、そそくさ食べて、食を楽しむという雰囲気ではありません。アマゾンによる買収後、そそくさ傾向はより強くなっています。
以前も書きましたが、成城石井のグローサラント、ただ店で売っているものを温めて提供しているだけでは、グローサラントにはならず、顧客の満足度も低いものと思います。
日経記事では、ルクアフードホールの成功が取り上げられていましたが、運営するのは、スーパーマーケットの阪急オアシスと外食企業のきちり。スーパーのバイイング力とマーケティングと商品開発力、そして外食のサービス、出来立ての料理を提供するオペレーションがあってこその成功なのです。
グローサラントの代表例は、なんといっても、イタリア発のEATALYでしょう。MD等いろいろご意見はあるようですが、米国のEATALYは、楽しく、かっこいい空間、まずレストランありき。食べて、飲んで、買って、語って、食を楽しむ。今回の旅でも、ロアーマンハッタンのEATALYに行きましたが、イタリアンの持つ特性もあるのでしょうが、食と文化を楽しませることがまずある。そして買い物はその次です。
<<できたてパスタに、ラテンサービス(たぶんメキシコ人)に、たのしい空間、これこそグローサラントです>>
外食と中食を線引きするわけではありませんが、オペレーションとその味の決め方が違うのです。そこを見誤ると、無駄な空間のあるスーパーマーケットになるだけです。
Progress Grocers 2018年4月号 85th Annual Repot of the Food Industry
Foodbiz.asia 2017.11.13 「グローサラントは、外食一業態やる気で臨むべし!」
NPDジャパン記事 20170517