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post by Fumi Michihata
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タイの食品産業は、海外に向け、長期視点で、勝ち組に

2019年5月30日 12:32 - Miki Michihata

 バンコク近郊で食品工場を2カ所、見学の機会を得ました。ひとつは、アグロコングロマリット、CPグループの鶏肉加工工場、もうひとつは、台湾メーカーのおせんべいの工場です。


 CPグループは、種子、肥料、畜産、加工、販売と、フードチェーンを垂直統合する巨大企業です。2017年にもベルギーのレディミール工場を見学しましたが、徹底的な効率化に驚きました。CPグループは、その膨大な資金と迅速な判断力と実行力で、グローバル食品市場のトップリーダーの地位を築いていることは、誰もが知るところでしょう。ネスレやユニリーバのような欧米流の強力なブランドを築いて攻略していく手法とは異なる、アジア流(華僑流とも言うべき)ネットワーキングの強さで拡大していくやり方には、畏敬の念を覚えます。

 

さて、見学したのは、バンコク郊外のCP THAILAND PUBLIC CO Lrd.の工場。敷地内に鶏の処理場があり、自動化されたラインで毎日28万羽が処理され、そのまま3つの工場の原料となります。鶏肉は、すべてハラルに則ったやり方で処理されています。焼いたり、揚げたり、パン粉つけたり、、様々な加工が施され、月間3千tが生産され、ほとんどがアジア、欧州、カナダなどに輸出されています。そのため、GMP(Good Manufaturing Practice)、ISO、HACCPなども取得しており、完全輸出対応型。また環境面も、コジェネの導入、排水処理、排気処理などにも配慮されています。


規格や環境配慮、また動物福祉の概念は当然のこと、海外の顧客のニーズを把握し、商品に反映させるマーケティング力や開発力は、輸出事業によって鍛えられたものと思います。加えて、タイの食品工場の強みのひとつは、原料が豊富で新鮮であることです。


 この強みである、お米に目をつけたのが、もうひとつ見学した台湾メーカー南橋THAILANDのせんべい工場です。30年前に工場を建設。最初の数年は非常に苦労されたそうですが、タイで骨を埋める覚悟で(実に30年最初に派遣された方が頑張って、定年過ぎても頑張っておられるそうです)、今や、88カ国に毎日20本のコンテナ分が出荷されているそうです。おせんべいやベビー用のお米せんべいなど、タイの安価なお米を使って、順調に拡大し、隣の敷地には、新工場が今年12月に竣工予定です。なんと、その機械設備は、全部日本製とのこと。日本のおせんべいが、台湾人の経営手法とタイの原料で、これほどに大きなビジネスになっているのに、驚き、そして日本人としては、なんとも忸怩たる思いも湧いてきます。

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<<台湾のメーカー 南橋THAILAND で、ともに認め合うという経営理念で30年>>


 マーケティング力は、言わずもがな、、日本の企業も、キッコーマン、キューピー、ミツカンなど調味料メーカーは頑張っておりますが、現地に根ざした商品やメニューの提案が肝であるなあと思います。日本の技術は、良いものですが、実際に使われて、大きな商売になり、利を生む。そしてそれが技術開発にまた再投資される、、そんな循環が行われていないのだなあと感じます。


 CPグループでは、事業の説明ビデオで、技術開発と教育ということが繰り返し出ていたことが印象的でした。それは、最先端の技術を磨くこと、社員の教育ということだけでなく、原料を供給する農家への教育、技術のサポート、そして、未来の世代、子供達への教育など、、そこにもしっかりと投資(社会的貢献)をしているという内容で、視野の広さ、奥深さに感銘を受けました。


この記事の執筆者:
Foodbiz-net.com
道畑富美
タイの食品産業は、海外に向け、長期視点で、勝ち組に
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