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post by Fumi Michihata
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ガラパゴス日本人のワザをもう一度

2023年6月13日 23:31 - Miki Michihata
食品製造機械の展示会、FOOMA2023 を見てきました。コロナ五類感染症移行となり、会期4日間で10万人以上が来場したそうです。AIやロボットへの関心は高く、展示されている機械も大型化しているように感じました。人手不足に対応するため自動化がますます進み、また環境面でロスを出さない製造法や製品が、まさに日進月歩で進化していることが伝わります。たまたま、前日に、とことん手づくり工場を見学する機会があり、全く対極ながら、通じるものがあるなあと感じたことを記しておきます。

惣菜の分野では、日本惣菜協会が経済産業省の事業を受け、ロボットの導入やAIと量子コンピューターによる自動シフト計算などに取り組んでおり、同協会の加盟企業などで実証実験が進んでいます。FOOMAの会場でも、いくつか惣菜の盛り付けや容器のふたしめ(容器も高度化していて意外と難しい)などロボットによる実演に人だかりができていました。

(自動化のロボットの裏に、繊細なワザがあり)
そのひとつ、お弁当の盛り付けラインにすでに導入されているというロボットを開発中のフィンガービジョンの濃野社長を会場に見つけました。濃野社長は、以前お会いしたとき、惣菜1品よりも様々なおかずが入ったお弁当をやりたいと、語っておられ、その後がきになっておりました。すでに実ラインに導入されている盛り付けロボットは、より正確な動作を目指して、毎夜毎夜と、ロボットの微調整をしているそうです。なるほど、自動化の裏には、アナログな日本人のわざやこだわりがあるのだなと感心しました。濃野社長も、こういう細かいことは、日本人にしかできないと豪語。確かに、私も展示会や実店舗などで、アメリカの調理ロボットはいくつかみてきたけど、おおざっぱ感は否めません。もちろん食文化の違いもあり、ロボットが調理するメニューも異なります。が、繊細さにおいては、日本人が絶対有利。
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<<センサーがついている指先ロボットで違う食材も決められた位置に>>

(とことん手づくりで、ハイエンド・高品質な惣菜づくり)
たまたま、FOOMA見学の前日に、山梨河口湖畔にある富士物産の惣菜製造工場見学の機会を得ました。こちらは、工場というよりホテルの厨房のような工場で大掛かりな機械は見当たりません。ほとんどの調理が人の手によるもの。作業する人、ひとりひとりがプロフェッショナルの技で、ハイエンドな宴会、ケータリングや機内食向けの冷凍惣菜を創り出していきます。オードブル用のゼリー寄せをつくる工程を見せてもらいましたが、野菜など具材は、サイズはきっちり揃えて、すべて手で、包丁で切っています。材料ひとつひとつがきっちりと調整されないと、仕上げの段階で美しくできあがらないとのこと。私など不器用なものが見ると、気が遠くなるような作業です。かつてはホテルやレストランの厨房で鍛えられた技術が、この工場で実践されていました。もちろん、大量生産ではなく、対品種少量生産、そのため、工場でありがちな、一人の人が同じ作業をするのではなく、多様な作業が求められます。能力を身につけることも素晴らしいですが、ここまで教育する過程も大変な努力であったと想像できます。日本人だけでなく、ベトナムからの特定技能者も同様に技術を習得していることにも驚きます。

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<<結婚式向けのオードブル。繊細な具材が詰まって美しい! 写真が縦向いててすみません!>>

ロボットと人の手と、求めるスキルは異なるかもしれませんが、いずれにも、繊細なワザと、その裏にある、細かいところにこだわる教育(ロボットだと調整となるのかな)が日本人ならでは。ガラパゴスと揶揄されることもありますが、これが日本の特技。世界市場を見ても、大いに可能性ありと期待します。かつてはものづくりを海外へもっていき空洞化した日本、また半導体の工場もいくつか計画があると聞きます。もう一度、ものづくりを見直してみる機会です。

この記事の執筆者:
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道畑富美
ガラパゴス日本人のワザをもう一度
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