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post by Fumi Michihata
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日本惣菜協会2023年度総会、記念セミナーでセコマに学ぶ

2023年5月27日 07:02 - Miki Michihata
日本惣菜協会の定時総会が、5月25日開催されました。同時に、惣菜白書が発表され、2022年の惣菜市場は、10兆4,652億円と前年の103.5%増。コロナ前の2019年からでは101.4%増。値上げ分など入れたら伸びてはいないような数字です。人口減・高齢化、そして家庭内食へのシフトも背景にあると思います。

基調講演では、北海道民から愛情込めて「セコマ」と呼ばれるセイコーマート、丸谷智保会長が「地域と共に歩むサステナブルな経営」と題し、お話をされました。北海道民の愛するセコマ、私も北海道に行ったら、必ずセコマに寄り、お土産含め、色々買って帰ります。
 実は、セコマは、日本初のコンビニエンスストア、セブンイレブン1号店開業の1974年より3年先んじて、1971年に創業しています。「地域密着、生活密着」の経営で、現在、道内1,138店を、174市町村(北海道内には179市町村があります)で展開し、過疎かつ広大な北海道で、人口カバー率99.7%!もはや水道電気か、ライフラインともいえる存在です。北海道では、次の町まで、いや隣の家までめちゃくちゃ遠い、北海道の地図は、我々の感覚と異次元。まさに日本の未来の縮図、過疎・高齢化の課題をいかに乗り越えていくかのお話は、百数十枚のスライドとともにジェットコースターのような内容でした。 

いくつか要点を記すと、
(1)コンビニではなく地域密着のSPA、サプライチェーンであること
  セコマは、コンビニにあってコンビニにあらず、あくまで「セコマ」というしくみ。
7つの農場、21工場と、自社の生産・加工拠点をもち、ものを運び、店舗を運営し、お客様にモノやサービスを販売するというサプライチェーンです。男の中の男、SPA中のSPAです。自社のPB商品とは、自社で品質保証ができることであると、業界におけるPBについて、その覚悟を改めて定義されました。

(2)地域密着・生活密着 
 2千億円の売上は、299円/個 × 9億個の積算。来客数は、年間2億3千万人と、道民人口で割れば、年45.2回(ほぼ週1回!)というリピートぶり。最多で利用される顧客は、年間970回来店されると。毎日3回!とほぼストーカーちゃうか?というほどの固定客。
 過疎と高齢化という課題に、いかに対峙するか。地域の協力や行政のサポートを得ながら、事業として継続させ、地域を支えていくかの悪戦苦闘ぶりを、人口900人、高齢化率4割の紋別のある地区を例に挙げ、その覚悟を説かれました。

(3)直営、直雇用
 セコマの道内約1,200店、道外95店の直営店率は82.5%。大手主要コンビニが「持たない経営」(セブンイレブンのFC率は98%(*1)ながら、中央集権的に運営しているのに対して、セコマは、直営・直雇用の独自路線を貫いています。2010年、当時社長であった丸谷会長が、40%後半であったFCを、7割を目指して直営にして行く方針を発表したそうです。(*2) 「親分が、全店残さず、ちゃんとフォローしてやるで!」というのは、店長、店で働く人たち、またお客様にも安心、働くモチベーションも高まります。

(3)削減価値
 原料高ではあるが、創意工夫。セコマは、先の自社製品でお値打ちある商品にあふれています。商品を自社工場で作っていることで、当然コストを抑えられます。それだけでなく、自社で生産・加工の機能を横展開、フルに使って、無駄になる食材などを、うまく別の用途として使い切る、使い回しができます。加えて、惣菜の包材までも自社製にしてしまうという徹底ぶり。人気のチルド惣菜は、トップシールの容器。最近、大手コンビニでも採用されていますが、立体的なふたよりもペラペラでちょいと見栄えは悪いです。が、この形態でコストダウン、そして、容器は自社で成型するという徹底ぶり。最近では、生分解性のプラスチックにさっさと切り替えて、よりサステイナブルな商品を実現。 生産・加工・販売の自社一貫体制に加え、知恵を出して、削減価値を創造しています

(4)外へも積極的に
 さらには、セコマブランドをセコマだけでなく、道外へ、海外へ売っていく。自社農場、自社契約農場、北海道には未利用の魅力ある食材がいっぱい。それらを減量に、削減価値でもって、どんどん外販。香港のYATAでは、パンデミック中でも、セコマコーナーが常設されているそうです。香港行くならうちの近くにも来てほしい。アイス、ワイン(セコマは、酒販店から出発したらしいです。)

 日本の課題の縮図、北海道で、こんなダイナミックな事業が動いているのかとワクワクしながら、聞いていました。最近、北海道に行く機会が何度かあり、開拓民の歴史を少し見てみると、道民性というのもなんとなく理解できます。なんとなく漂う閉塞感に、ぽっかり青い空が広がったようなご講演の内容でした。




参考資料
2)浜中淳「「北海道企業」はなぜ強いのか」講談社+α文庫(2022年)



この記事の執筆者:
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道畑富美
日本惣菜協会2023年度総会、記念セミナーでセコマに学ぶ
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