ボストンを中心に79店を展開するスーパーマーケット、Market Basket(マーケットバスケット)は、およそ百年以上の歴史を持つスーパーマーケットです。顧客から愛され、その顧客のロイヤリティは、「We are the Market Baslet」(日本では、太田美和子さんにより「奇跡のスーパーマーケット、マーケットバスケット」と翻訳・出版されています。)という本に書かれている通りで、同族内の継承争いで現社長が辞任を強いられた折に、顧客はじめ地域の人々がボイコット運動を起こし、現社長の辞任を回避したという物語に表されています。
全国チェーンや地場のスーパーマーケットがひしめくボストン郊外にあって、大繁盛を続け、英領利益率8%と、スーパーマーケット業態としては、高利益率を維持するマーケットバスケットの秘密は、いかに?そして、顧客を惹きつける魅力は何なのか?を、ボストン空港に近いチェルシー店の店長と本社のスーパーバイザーに伺いました。
とりわけ、新しい工夫がされているわけでもないスーパーなのですが、入り口に入ってすぐに、ガラス張りの事務所兼インフォメーションが配置され、店内全体が見られる見張り台のような役割の二階部分があります。全従業員のタイムカード(のようなもの)が置かれた店もあります。それだけが事務所ではないと思いますが、とにかくオープンにされています。
入ると、野菜や果物からではなくて、乳製品や飲料から、、ぎっしり整然と陳列された売り場にびっくりします。空きがなく、次から次と補充している感じ。伺うと、飲料などの冷たいものから先にカゴに入れ、次に肉加工品、魚と続き、野菜と、回遊する導線となっているとのことで、最後に、最も鮮度が問われる農産物を買ってもらうとのことです。通路は、他のスーパーマーケットの1.5倍広さを取っているそうで、カートにいっぱい買い物される顧客への配慮からです。
商品はすぐに補充しきちんと整列する、またレジは、レジと買い物したものを袋に入れるバッガーの二人体制など、目に見えるところでは、いくつか特色がありますが、話を伺ってみると、4つの重要な要素があるとのことで、一つは、たくさんの人口があること(立地に出店すること)、次に顧客満足、そして品揃え(セレクション)と価格とのことでした。近所のスーパーマーケットであり、その立地に応じて、一つとして同じ品揃えの店はないとのことでした。
当たり前のことですが、当たり前のことがなかなか実現できない、継続するのは、もっと難しい。お客様がたくさん来店され、商品が回転する、売上が上がって、働く人の給料も上がる、、と好循環が続くのでしょう。が、その努力は凄まじいものがあります。店の人は、ネームカードに、名前と勤続年数が書かれています。また、働く人は、一人ひとり、違う個性があり、それを尊重するのだと言われていました。
ネットでなんでも買える時代、マーケットバスケットは、デジタル世代も家族を持ち、親の世代から引き継いて、買い物にきている様子。全世代が集まる店です。現代のスーパーマーケットは、なんでもありすぎて、実は買いたいものがない、顧客が行きたい動機付けがない。
店に来るのは、食品を見て、触れて、感じることであり、オンラインでは得られない"touch"があるとのこと。便利さを皆、求めているが、マーケットバスケットには、「安心できるコンビニエンス」があるのだと話されていましたが、いまの世の中、便利さのはき違えをしているのだなとも気がつきました。