ドイツのスーパーは、独特な業態がたくさんあります。日本にもあるのは、Metro。一般売りはしていませんが、キャッシュ&キャリー、業務向け業態です。欧州、ロシア、インド、トルコ、中国など31ヵ国に展開しています。
<<Aldi とREWEが隣接しています。皆、使い分けが上手。>>
なんといっても、ドイツの小売業で元気のあるのは、ハードディスカウンターのLidlとAldiです。Lidlは、KaufLandというハイパーマートも運営する、ドイツ一の流通企業Schwarzグループ傘下にあり、約8千の店舗を展開しています。欧州各国にあり、全世代、様々な客層を集めています。ディスカウンターだから低所得者層相手というわけでなく、高級車でLidlを目指す人たちもいます。品物は悪くなく、特に、バターたっぷりのクロワッサンは絶品。焼成済み冷凍クロワッサンをどんどん店内で焼いていきますが、日本円で50円ほど。これは本当にお買い得。パンの焼ける香りがまたいいですね。
<<バターたっぷりLidlのクロワッサン、日本でもヨーロッパ産焼成クロワッサンはあるけど、それ以上にうまいです。>>
一方のAldiは、ボックスストアという、段ボールの箱ごと売り場に並べるという効率追求の業態を最初に始めたと聞いています。本当に安いです。オーガニックのオリーブオイル、500㎖で2ユーロ弱。買って帰りたいくらい安いものがたくさん。雰囲気は、Lidlよりランクダウンする印象ですが、、米国で人気の、あの素敵なTrader Joe'sだって傘下に収めています。(正確には、北Aldiと南Aldiあり(兄弟で分離)、Trader Joe'sの親方は、北アルディです)
<<服もなにもかもぐちゃぐちゃの陳列が店の中央にあるのがまたいい Aldi>>
ドイツの合理主義が、形になったと言えるこの二大ディスカウンター、世界的にもどんどん成長を続けており、今や米国でウォルマートと激しく戦っている模様です。以下の記事は、参考までに。
Wall Street Journal 2017.05.17 "Why Wal-Mart Is Worried About a Discount German Grocer"
Reuter 2017.05.17 "Germany's Lidl to price groceries up to 50 percent below U.S.rivals"
Chicago Tribune2017.05.15 "Aldi will spend $180 million remodeling most of its Chicago-area stores"
意外にドイツの小売業は、グローバルに展開しているのものですね。実に小売業のランキング10位以内に、ウォルマート、コストコはじめ米国企業が7社、ドイツは、Lidlを展開するShwarzグループ、Aldi の2社がランクインしており、(残り1社は、フランスカルフール)、米国勢主流のなか、ドイツのディスカウンター2社が頑張っています。米国の人口3億人、ドイツ8千人を考慮に入れれば、2社がランクインしているのはすごいことです。ちなみに、日本の企業では、イオンが14位、セブンアイが20位です。(出典:世界の小売業ランキング2015 Deloitte トーマツ)
グローバルに展開するディスカウンターの他にも、ドイツ内で展開するローカルな Edeka、Rewe も18位、22位に入っていて、ドイツの小売市場は、大手企業による寡占化も進んでいることがわかります。
<<小さいお子さん連れの女性客が多いですね AlNatura>>
<<Basicは、環境活動に熱心>>
一方、ドイツならではの、オーガニックスーパーのチェーンがあるのもおもしろいです。AlNatura Basicなど、意識高い系の主婦や若い世代が、熱心に品物を選んでいる様は、ドイツならではの光景です。フランスでは、ビオ、北欧あたりでは、エコロジカルと有機農産物のことを言いますが、ドイツは、環境、健康意識がほかの国に比べても高いように感じます。バイオダイナミック農法のシュタイナーは、シュタイナー教育でも有名ですが、ドイツの人。ナチスが有機農業を推奨していたという話もあり、藤原辰史さんの「ナチ・スドイツの有機農業」という本は、興味深いですよ。
さておき、国によって小売業もこれだけ違う、ヨーロッパって、地続きなのに、国境ががっちりあるなぁと、いつも感心することです。