和歌山県紀美野町へ行ってきました。ねこの"たま駅長"で有名な和歌山電鉄・貴志駅の名のついた、貴志川沿いの山あいの町です。その昔は、林業や高野山の参詣など、人や物の往来も盛んだったのでしょう。川沿いの棚田が美しく、その当時の生活をかいま見ることができます。2006年に美里町と野上町が合併してできた紀美野町は、人口1万人弱、和歌山市からは車で1時間ほどですが、過疎と高齢化に直面しています。体験型施設、紀美野町セミナーハウス未来塾にお世話になりましたが、その建物は、明治8年開校の小学校だったものです。当時は、たくさんの子供たちが山道を歩いて通学してきたそうです。
<<川沿いの棚田が美しい町>>
前置きが長くなってしまいましたが、この紀美野町内には、カフェやパン屋さんがいくつかあります。そのほとんどが週末だけの営業であるのですが、そのひとつ、「森のパン屋さん」を訪ねてみると、えらく賑わっています。ご夫婦二人だけでの営業ですが、私たちが、昼前に到着し、パンやシチューを食べている半時間くらいの間に、パンは完売していました。たくさん作っているわけではないですが、和歌山、奈良、大阪から来たというお客さんたちが、素晴らしい景色に感激し、ここまで来た道のりを尋ねあっています。「迷わずに来られたか」「途中でナビの案内が終わってしまった」・・とか、私たちも、「この道行くの?」というような細い山道をぐねぐね走って、幾度か道を間違えながら、たどり着きました。その「わざわざ行く感」そして「やっと来た達成感」がたまらない。また、こんな大自然の山の中にパン屋がある、という驚きと感動でいっぱいです。この秘境に、他にもパン屋やカフェあると、和歌山市内から来たというご夫婦に教えてもらいました。
<<道に迷わなかった?談義で、見知らぬもの同士で盛り上がります。窓の外は絶景が広がります。>>
確か、テレビでも行列する山奥のパン屋さんが取り上げられていたなあ、思い出したり、帰って、検索してみると、「森のパン屋」「山のパン屋」いっぱい出てくるではないですか。週末だけの営業、いや、欲を出して通販しているところもあります。申し訳ないことですが、パンの味って、製粉やその他の材料、製パン機械などの質の向上により、そこそこ美味しいものが焼けるようになっています。そこそこおいしいパン、差別化するためには、ロケーションというのも重要な要素です。
<<だいぶ上ってきましたが、まだ上がります。>>
と思っていると、箱根の豆腐屋の孫ですという学生が、豆腐を持って訪ねてきました。後継者として家業をしょって立とうという彼は、全国の豆腐屋さんを巡っているのですが、豆腐業界でも、田んぼや山のなかで行列のできる豆腐屋があるというのです。水がよいこともひとつの条件ですが、顧客側にとったら「わざわざ行く感」がたまらないのでしょう。
インターネットの普及で、一等立地がもはや優位条件ではなくなりつつあります。一部のチェーン店はそうではないかもしれませんが、もはや駅前の店はダサい、わざわざ道に迷いながら辿りつく、私だけが知っている、という立地が優位に働く時代になっています。まっ、供給過剰なんでしょうね。
<<ついでながら、たま駅長で有名な貴志駅、台湾、香港からの観光客もいっぱいです。>>