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「食と農をめぐる講演会」より、「農学」への期待

2021年2月24日 20:42 - Miki Michihata
飲食業には自粛要請が続き、業務用食材は厳しい状況で、SNSでも、在庫処分のためのセールを呼び掛ける投稿をよく目にします。最近では、芝居の幕間弁当の代表格、日本橋弁松さんがいよいよお弁当のおかずをチルドで通販を始めています。あの濃い味を求め、私も買いたいけど、全然買えません。オンラインでほぼ何でも食べられるようになってうれしいけど、宅急便のお兄さんの疲弊ぶり、1軒ずつ運送する手間もエネルギーも多大なる環境負荷になるように思います。これでいいのかなあ~と、昭和のばばぁは考えてしまいます。

先週土曜日、2月20日に、京都伏見の招徳酒造とその酒米を生産する株式会社丹波西山とによる「農で結ぶ里と街」コンソーシアムが主催する「食と農をめぐる講演会」で話をする機会をいただきました。
 
プログラムは、以下の通り。
 第1部 講演1 「化学肥料の功罪と有機農業」
       京都大学名誉教授 京の農業研究所主菜 間藤徹氏
     講演2 「食卓と農地を結ぶ」
         京都府立大学准教授 中村貴子氏  
 第2部 講演3 「酒の中の百薬」
       京都大学農学部教授 佐藤健司氏
     講演4 「食の近未来を描く」
       Foodbiz-net.com 道畑冨美氏
司会  招德酒造株式会社 代表 木村紫晃
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<<会場は昨年秋にできた京都信用金庫さんによる交流を目的としたオフィス>>

 講演に先立ち、代表の招徳酒造、木村社長が、地球規模での環境の変化が農業に影響を与え、酒の品質にも関わるようになっている現状と気候変動、食品ロス、一方では、供給のアンバランス、さまざまな課題を食は抱えているとあり、情報の洪水中で、主体性をもって、どう選択して行けばいいのか、食と農について、今一度共に学ぶ場をもちましょうという、本会の趣旨を説明されました。

土壌と植物栄養学の大家、間藤先生からは、窒素循環の話を聞きました。ハーバーボッシュの窒素固定法の発明以来(戦争終わってからといった方が正しいか)、肥料として投入される窒素量は、うなぎのぼり。1日60gのたんぱく質をとるとして、世界人口必要な窒素量は、2,600万tで足りるらしいが、投入される窒素量は、なんと1億1千万t!完全、窒素過剰。化学肥料や有機肥料として投入されているという。果たしてそれでいいのかという話から、ご自身でも京都市内でSoup&Smileという地産地消ジュースとスープの店、を運営されている中村先生からは、地産地消の話、どうやって生産者をサポートするかという話。続いて午後は、佐藤先生は、日本酒は、百薬の長という話で盛り上がる。招徳酒造の生酛(速醸という現代の醸造法では、雑菌を死滅させるために、乳酸を添加する工程がありますが、生酛づくりでは、乳酸菌も育てて、乳酸を生成させようという昔ながらの手法、それなりに時間もかかるようです)を調べると、ピログルタミン酸のペプチドが多いのだそうで、それが少量で、効く!のだそうです。酒の他にも、味噌など発酵食品に含まれるので和食と日本酒というのがいいようです。うーん、これは日本酒が美味しくなります。
そして、私、現代の食生活について、フードテックの話などを交えて、お話ししました。代替タンパクもブームか定着か、話題になってるで、と。

でも、最初の間藤先生の話だと、窒素余ってるやん。まさに情報やブームに踊らされる食産業。ほんとのところ、どうなのか、農学・環境の視点から、俯瞰して捉え、考えたいものです。農学を学ぶものが、さまざまな視点から話題提供をした、このセミナー。改めて、農学には、学際的な分野を広げる魅力があるなあと。農学部ができたころは、産めよ増やせよ、、の時代、今では、人口減少、量の需要は減少、環境持続性を考慮しながら、どう価値を創造していくかが農学に問われています。

さまざまな角度があっておもしろい、さらに違った視点から農学を学びたいなあと、また情報を発信すればいいかなと考えたりしています。
この記事の執筆者:
Foodbiz-net.com
道畑富美
「食と農をめぐる講演会」より、「農学」への期待
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